開発・導入実績

CASE STUDY

マックスインジョイント®(床暖房用温水継手)

           
マックスインジョイント®(床暖房用温水継手)
業種
住宅設備
課題
耐久性・軽量化・部品点数削減

過酷な温水環境に耐える特殊PPS樹脂継手への挑戦

1996年、株式会社ニックスのR&Dセンターは、大手都市ガスメーカーの床暖房技術部門より、温水式床暖房における配管継手の樹脂化という極めて高度な技術相談を受けました。温水式床暖房は一般家庭の床下にパイプを通し、温水を循環させて暖房を行うシステムですが、当時は以下のような物理的・工学的なトレードオフの克服が大きな課題となっていました。

温水配管の樹脂化における「長期耐久性」と「耐圧性能」のトレードオフ

配管部材の樹脂化は、従来の金属製部材における質量の大きさや施工負荷を低減する特性が期待される一方、長期にわたる信頼性の確保において非常に厳しい物性水準が求められました。

  • 高温水による成分溶出の抑制: 長期間にわたって高温の水に曝されても、樹脂中の成分が溶け出さない優れた化学的安定性。
  • ウォーターハンマー現象への耐圧性: 通常の運用圧力を大きく上回る、急激な水圧負荷(ウォーターハンマー)に耐えうる高い機械的強度。
  • 住宅寿命と同等の長期耐用性: 30年、50年という長期にわたり、熱サイクルによる劣化や破断を起こさない寸法安定性と耐久性。

当時、一般的なPBT樹脂や標準的なPPS樹脂ではこれらの過酷な温水環境下における要求を同時に満たすことが難しく、材料選定は極めて難航しました。しかし、株式会社ニックスは自動車の燃料系コネクタ開発で培った高度な材料知見を活かし、温水環境に特化した自社開発素材「NIXAM®(ニグザム)」の技術をベースとする特殊PPS樹脂の採用を提案。材料の配合選定と、流体制御を高次元で両立させる精密な金型・機構設計をスタートさせました。

A4ファイル12冊分に及ぶ膨大な「技術エビデンス」の構築

設計・開発フェーズでは、材料選定と評価試験が幾度となく繰り返されました。試作品の再現性と信頼性を客観的に立証するため、強度試験や各種評価データを徹底的に解析。作成された技術レポートは、添付資料を合わせると厚さ5cmのA4判ファイルで12冊分にも及ぶ膨大なものとなりました。このロジカルかつ強固なデータ裏付けが、樹脂化に対して慎重であった設備業界からの高い信頼を獲得する契機となりました。

外部機関による「102℃・50年」の寿命予測と自社ブランド化

開発された樹脂製継手は、信頼性をより確固たるものにするため、この分野の評価で知られるスウェーデンの第三者評価機関(スタズビック社)へ長期評価を依頼しました。同時に社内でも温水と冷水による過酷な熱サイクル繰り返し評価や、挿入試験などの過酷な環境シミュレーションを並行して実施。その結果、外部機関より「102℃の環境下で50年程度の使用が可能」という極めて高い耐久性予測データが示され、クライアントの厳格な品質基準をクリアすることに成功しました。

1997年冬の量産開始を経て、2000年にはこの革新的な樹脂製継手技術をベースとしたオリジナルブランドの立ち上げが決定。自社開発素材「NIXAM」の文字を反転させた「MAX-IN」から、現在の『マックスインジョイント(Max-in Joint)』ブランドが誕生しました。

2001年7月には、7タイプ29アイテムにおよぶ豊富な製品ラインナップを確立。単なる樹脂化にとどまらず、工具不要で確実な接続を可能にするワンタッチ機構など、施工現場の作業性向上(省力化)に配慮した工夫を結集させました。高度な材料科学と確実な機構設計が生んだマックスインジョイント®は、現在も日本の住宅設備における配管施工の確実性と高品質化を強力に支え続けています。

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